相場展望10月25日 中国、不動産税導入で景気後退・世界経済悪影響 日本株は、衆議院総選挙結果次第で揺らぐ可能性

2021年10月25日 10:13

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)10/21、NYダウ▲6ドル安、35,603ドル(日経新聞より抜粋
  ・IBMの7~9月期決算発表は予想を下回ったことが嫌気されて株価は▲10%急落、1銘柄でNYダウを▲90ドル近く下げて、重荷になった。ただ、NYダウは堅調な米景気指標を支えに買いも入り、相場の底値は堅かった。
  ・新規失業保険申請件数は29万件と改善し、米景気回復が続いているとの見方が強まった。
  ・10年長期金利は一時1.68%に上昇したが、株式相場の反応は限られた。
  ・原油高がインフレ懸念を招いていたが、原油価格が反落し、投資家心理の改善につながった。

【前回は】相場展望10月21日 米国株式にとって、長期金利上昇は要注意 外国人投資家に振り回される、日本株

 2)10/22、NYダウ+73ドル高、35,677ドル(日経新聞より抜粋
  ・8/16以来、NYドルは2カ月ぶりに過去最高値を更新した。
  ・米企業の7~9月期決算が好調で、米景気の回復期待の高まりが投資マネーの流入につながっている。
  ・ただ、インフレの長期化や金融緩和路線の転換が景気の重荷になる可能性もあり、米国株式相場の先行きに波乱要素も多い。

●2.米金利先物市場は、利上げ時期を「2022年6月」となる可能性を70%織込む(フィスコ)

 1)供給サイドの混乱は悪化しており、高インフレが想定以上に長期化する可能性が強いとした。

●3.パウエルFRB議長発言(フィスコより抜粋

 1)テーパリング(QE縮小)を開始
  ・テーパリングは「2022年中旬に終了する道のりにあり」金融政策が正しい位置にあると言及した。

 2)供給の混乱
  ・2022年まで続く可能性が強い、と警告した。

 3)インフレリスクに言及
  ・高インフレが想定以上に長期化する可能性が強いと警告した。
  ・リスクは明確にボトルネック、高インフレに傾斜していると指摘した。

 4)早期利上げ観測
  ・インフレ期待が高まる深刻なリスクが見られれば、利上げする、と示唆した。

●4.米10月製造業PMIは59.2、9月60.7から予想以上に低下、3月以来で最低(フィスコ)

 1)10月サービス業PMIは58.2と、9月54.9から予想以上に上昇

●5.米9月中古住宅販売件数629万戸と前月比+7%増、1月以来で最高 (フィスコ)

●6.米新規失業保険申請件数29万件に改善、コロナ禍開始以来の低水準(ロイター).

●7.FRB要人発言

 1)ウォラー理事10/21、FRBのバランスシートは2~3年で縮小すべき(ロイター)
  ・8兆ドル規模に膨らんだバランスシートを大きくしておく理由はない。満期を迎えた証券を償還させる方法で、今後数年間で問題なく縮小が可能とした。
  ・インフレ率が現在のペースで上昇を続けるなら、FRBは来年「より積極的な政策対応」を実施する必要がある、との見方を改めて示した。

●8.FRBは新規制を発表、「政策委員による個別株などの保有を禁止」(フィスコ)

●9.米航空大手3社、いずれも最終黒字ながらも、原油高で燃料価格上昇に懸念(NHK)


■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)10/21、上海総合+7高、3,594(亜州リサーチ)
  ・中国人民銀行(中央銀行)の資金供給があったため、株価上昇につながった。
  ・中国経済の減速懸念がくすぶるなか、当局による経済対策への期待感が続く。
  ・ただ、インフレ高進の警戒感があり、上値は重かった。

 2)10/22、上海総合▲12安、3,582(亜州リサーチ)
  ・商品市況安が嫌気される流れとなった。WTI原油、アルミ、銅などの主要産品の先物が軒並み安となり、10/22の上海商品取引所でも下落した。
  ・資源・エネルギー・素材銘柄が売られ、全体相場の重石となった。
  ・不動産業界を巡る過度な不安感の後退、中国人民銀行による厚めの資金供給が支えとなった。
  ・業種別では、エネルギー・非鉄・鉄鋼に売りが先行し、発電・医薬品が売られた。反面、食品飲料・小売り・家電・自動車など消費関連株がしっかり。

●2.中国の不動産投資抑制政策は、中国経済成長の後退・世界経済への悪影響を示唆

 1)不動産政策転換の狙いは、「格差是正」による「共同富裕」思想実現への強い意志
  習近平国家主席は、「住宅は住むもので、投機の対象ではない」という考えを示す
   (1)不動産への投資を抑える。
   (2)住宅価格の高騰を抑制。

 2)住宅価格高騰が招く現状の問題
  (1)マンション価格は年収比、北京で58倍と、1989年の東京18倍と比べて異常値。なお、現在の東京では12倍。
  (2)中国では結婚の条件として、男性側が住宅を用意するという慣例がある。しかし、住宅価格が高騰し結婚できない人が急増し社会問題化している。
  (3)独身比率増は、出生率急低下を招き人口減少し、高齢化を急伸させる。
  (4)住宅価格高騰で若者が「夢」実現を諦め、労働意欲を失った若者に「寝そべり主義」が広がるという社会問題化を引き起こしている。
  (5)中国共産党一党独裁の基盤を不安定にさせる大きな要因の1つにまで増大。

 3)不動産投資と価格高騰の抑制策として、不動産融資の抑制方針を昨年8月打ち出す
  (1)不動産業界は、追加融資が得られず、資金繰りが悪化し、代表例として中国の不動産業界最大手の恒大集団の破綻問題が表面化した。その後、不動産会社の経営難が続出している。

 4)事例:日本の不動産政策と経済成長への悪影響
  (1)日本の住宅バブル崩壊の原因は、高騰した住宅価格抑制策として日銀による金融引き締め「融資の総量規制」が引き金を引いた。住宅融資していた銀行傘下の「住専」の破綻処理で、約100兆円の損失。
  (2)日銀の金融引き締め策は、日本経済全体に波及し、日本経済失速の引き金を引いて、「失われた30年」という言葉を生んだ。日本企業全体も巻き込まれ巨額損失処理に追われた。結果として、例えば、世界シェア50%の半導体産業への成長投資が維持できず、現在は世界シェア10%で、技術的にも後塵を拝しているのが現状である。日本のGDP(国内総生産)は550~500兆円に永らくとどまり、1人当たり賃金も大きく低下した。雇用も、正社員減少、非正規雇用増加につながった。
  (3)日銀の総量規制が発端となり、企業が後ろ向き損失処理に追われ、世界経済の成長トップの位置から引きずり下ろした大きな要因となった。

 5)中国の不動産投資・価格抑制策は、日本のケースに似る可能性がある
  (1)中国のGDP(国内総生産)の約20%が不動産業界が占めていると言われる。関連する建設業界を含めると約25%もある。いわば、不動産業界の対応次第によっては、日本のケースになり得る可能性がある。
  (2)中国政府は、日本の住宅バブル崩壊の失敗を研究して、同じ轍を踏まないようにしているようだ。
  (3)しかし、住宅価格が北京で年収比58倍を、10倍程度まで引き下げるのは至難の業である。どうしても、金融政策は特定の不動産業界にとどまらず、他の産業界に波及する。「資金」が「血液」であるため、中国経済全体に影響を及ぼしてしまう。とてつもない実験と言えそうだ。

 6)中国共産党一党独裁の行方
  (1)中国経済が、不動産業界の混乱を引き金に全産業に波及した場合、失業者が増大する。
  (2)中国では、毎年の新規就業者数が約700万人あると言われ、雇用確保のため世界で中国企業が受注したプロジェクトに労働者派遣を行って雇用調整をしている。
  (3)失業者増大は、社会不安定につながり、国民から中国共産党への不満が噴出し共産党一党独裁の根拠が揺らぐ原因となり得る。
  (4)中国の社会体制・経済への波及効果を見据えて置くのも必要となる。

 7)中国経済の混乱が、世界に与える影響に注目
  (1)中国生産がコスト高となり、インフレを世界に輸出する可能性。
  (2)中国の生産に混乱が生じると、世界のサプライチェーン混乱を引き起こす。
  (3)中国経済に大きく依存していた世界の各国、特に東南アジア諸国の経済への波及。
  (4)中国の世界からの購買力低下が、世界経済に与える影響が大きい。例えば、中国は銅など資源で、世界の約5割を輸入している。その購入量が減少すれば、資源価格は崩れ、資源輸出国の経済は回らなくなる。

●3.中国・恒大集団はドル建て社債の利払い実施、目前の債務不履行の危機回避か(朝日新聞)

●4.中国・習指導部、もろ刃の『不動産税』、狙う改革実績、根強い反対論(朝日新聞より抜粋

 1)中国が、日本の固定資産税にあたる「不動産税」の試験導入を決めた。来年に開催される5年に1度の中国共産党大会を前に、習近平指導部は
  (1)格差の是正
  (2)中国恒大集団の経営危機に揺れる不動産市場の改革を成果にしたい考えと見られる。

 2)ただ、中国では
  (1)不動産税への反対論は根強い
  (2) 景気を冷え込ませるリスク
  もあり、習氏の手腕が問われる。

 3)「不動産税の立法と改革、試験導入を積極的かつ着実に進めなければならない」。
  ・中国共産党の理論誌「求是」によると、習氏は8月の党の会議でこう述べ、不動産税の導入に強い意欲を示していた。
  ・中国が不動産税を導入するかどうかは長く注目されてきた。習指導部が発足した2012年以降も、党の重要会議や全国人民代表会議(全人代)などでたびたび言及してきた。

 4)中国の全人代・常務委員会は10/23、「不動産税」を一部都市で試験的に導入することを決めた。
  ・まず、5年間の試験期間としているが、習近平指導部は
  (1)不動産市場安定
  (2)格差是正
  のため、本格導入を目指すと見られる。

 5)中国では、土地は基本的に国の所有物であるため、個人や企業は土地の使用権を国から購入して建物を所有している。そのため、土地も対象に含めた固定資産税は課されていなかった。

 6)新華社によると、
  ・中国政府が今後、実施都市や具体的な税率などを決める。課税対象者は、土地の使用権を持つ人や住宅など建物の所有者。農村の住宅などは含まれない。
  ・すでに、2011年から上海市や重慶市では購入した住宅への課税を先行して実施してきたが、土地の使用権は対象外だった。
  ・試験導入の起源について、状況次第では延長するかを再度込めるともした。さらに、「条件が熟せば適時法律を制定する」として、将来的に立法化し全国的に拡大していく可能性も示唆した。

 7)中国が不動産税の導入に動いた背景には、富裕層による投機や不動産会社による乱開発により価格の高騰が社会問題となっていた不動産の改革に加え、習指導部が掲げる「共同富裕」(共に豊かになる)の実現がある。中国共産党の理論誌「求是」は10/16付けの最新号で、習氏の演説を掲載した。高所得者への対策として、所得税の強化並び不動産税の立法化に向けた試行などの税制改革を打ち出していた。

 8)また、中国では地方政府が土地の使用権の売却収入に過度に依存していることが、不動産価格の高騰に拍車をかけていると問題視されてきた。税収を安定させることで、こうした問題を解決する狙いもありそうだ。

 9)「自分への課税を、嫌う党幹部も」「市場はさらに冷え込む恐れ」
  ・ただ、この政策は『実現はしない』、との見方が中国政府関係者の間にある。「党内には、自分の不動産に課税されることを嫌う党幹部は少なくない」からだ。

●5.中国政府は10/23、家庭教育も国が管理の姿勢を示す、「家庭教育促進法」を成立(NHK)

 1)法律では、子供の過度な学習負担を避けるほか、インターネットに夢中になることも防ぐため、保護者は勉強や休憩、スポーツなどの時間を合理的に割り振らなければならない、としている。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)10/21、日経平均▲546円安、28,708円(日経新聞)
  ・前日の米株式市場で米長期金利の上昇を背景にハイテク株が下がり、前場は、東京市場でもグロース(成長)株を中心に売り優勢となった。
  ・後場になると、海外短期筋などによる先物の売りが膨らんだ。
  ・日本の政治情勢を巡り、自民党が議席数を減らし過半数を維持できるかどうかの攻防との報道が伝わった。岸田政権の求心力低下による経済回復の遅れへの懸念が強まり、売りを誘った。
  ・円安に振れ、輸出関連株が下げを加速させた。

 2)10/22、日経平均+96円高、28,804円(日経新聞)
  ・中国不動産大手の中国恒大集団が米ドル建て社債の利息を送金したとの報道を受け、投資家心理が改善し、一時+300円近く上げた。
  ・前日の米ハイテク株高の流れを受け、東京市場でも半導体関連株の上昇が目立つ。
  ・ただ、衆院選挙で自民党が議席減の観測があり、引き続き重荷となった。
  ・来週からの決算発表本格化を控え、決算内容を見極めたいとの雰囲気があり、積極的に買う動きは乏しかった。

●2.日本株は、強気基調ながら衆議院選挙次第で揺らぐ可能性

 1)リスク
  ・衆議院選挙 :自民党の退潮と岸田政権ふら付きによる経済対策不透明の深化。
          ⇒ ばら撒き政策が、岸田新政権の経済対策となり得る。
          ⇒ 新政権誕生直後の「お祝儀相場」への期待がしぼむ可能性。
  ・原油価格高騰:消費支出抑制、コスト増を招き、経済活動にはマイナス
  ・バルチック海運指数:急落は、世界経済低下を読み込んだ結果なのか?注目。    
     10/7   10/22
     5,650 ⇒ 4,410  ▲21.9%低下

 2)外国人投資家は、買い増しに転換した
  ・8/21から買い仕掛けをしたバークレイズは若干の売り越し基調だが、Cスイスなど他の外国証券は買い越しに転じて、外人合計で買い越しに転換。
  ・外国人投資家の先物買い枚数の推移
      10/8     10/22
     93,454枚 ⇒ 114,280枚  +20,826枚増

 3)日経平均10/21急落は、「野村・みずほ」証券の大量の先物売りが要因。
  ・日経平均の下落時の買い支えに寄与した「みずほ」が、益出しの大量の売りに転じたため、「みずほ」の動向にも注目したい。

●3.医療従事者にコロナワクチン3回目接種を12/1実施で準備(朝日新聞)

●4.企業動向

 1)出光興産   バイオ燃料の本格生産へ(時事通信)2030年までに年30万トン、2050年までに年300万トンの方針

●5.企業決算

 1)中外製薬   12月通期純利益2,320⇒2,930億円に上方修正(時事通信)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4612 日本ペイント  業績好調。
 ・6101 ツガミ     業績好調。工作機械受注増増加に期待。
 ・6754 アンリツ    業績堅調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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